【引退選手特別コラム】 長船加奈選手

特別コラム

「Thank you for our STARS」 2 DF 長船加奈選手

 高校を卒業してから、サッカー選手として18年の時を歩んできた。その中で長船加奈選手が何よりも大切にしてきたのは、「自分のためではなく、誰かのため」という思いだった。「本当に周りに恵まれてきたんですよ。自分だけのためだったらここまでできなかったかもしれない。この人たちのためにがんばりたい。そう思える監督やチームメートと出会ってきたんだなって思います」。

 波乱万丈のサッカー人生だった。東京電力女子サッカー部マリーゼ所属4年目の2011年には東日本大震災の影響でチームが解散。日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)でプレーを続け、2012年からはベガルタ仙台レディースでマリーゼの仲間たちと再びボールを蹴る日々を取り戻した。2015年には当時の浦和レッズレディース(現三菱重工浦和レッズレディース)へ移籍。ここでは「タイトル」というサッカー選手として一番の喜びを経験した。

 「もちろん点決めた時とか、アシストした時、試合に勝った時も最高に楽しかったです。でもやっぱり1番は、レッズの仲間と最後のなでしこリーグで優勝をした時(2020年)。それまでタイトルとは無縁の人生でした。優勝できて最高に嬉しかったし、楽しかったですね」。

 苦しいけがとの戦いもあった。2021年に左ひざの前十字靭帯を損傷。復帰を目指す中で再びの大けがに見舞われるも、必死に歯を食いしばって前に進んできた。完全復活となった2024-25シーズンに約10年ぶりに古巣の仙台へ帰ってきた。所属していた時とはチーム名もチームカラーも変わっていた。しかしかつての仲間やサポーター、当時の雇用先で出会った人々は再会を心から喜んでくれた。「浦和でもほんまに長いことやってきて、熱いサポーターの人たちと最高の時間を過ごしました。そして選手として最後の1年に、仙台にまた戻ってこれたっていうのも縁があったのかなと思っています。仙台では懐かしい人たちが試合を見に来てくれています。覚えていてくれたことがめっちゃ嬉しかったです」。

 現役最後のシーズンは、最終節前まで16試合に出場。けがから完全復活のシーズン、DFリーダーとして常に周りを落ち着かせ、以前と変わらぬプレーを見せた。しかし、チームとして思う結果が得られなかった悔しさも十分すぎるほど味わってきた。後輩たちにはもっとサッカーを楽しんでもらいたい。「純粋にサッカーを楽しめていない人が結構いるんじゃないかなって思います。マイナビは今が耐え時でもあると思うんですが、サッカーが楽しいという瞬間は絶対あるから、それをこれからもっともっと経験して欲しい」。

 どんな苦境も朗らかな笑顔で乗り越えてきた。誰もがその人柄を慕った。これからの日々では「いろんな人と出会って、いろんな経験をして、また一回りと人間力を高められたらなって思います」と、長船加奈は未来に向かっていく。

2 DF 長船加奈選手
【生年月日】1989年10月16日
【所属歴】
ひじりSC-豊津女子FC-東京電力女子サッカー部マリーゼ-日テレ・ベレーザ-ベガルタ仙台レディース-三菱重工浦和レッズレディース-マイナビ仙台レディース
【代表歴】
2009年 日本女子代表
2010年 日本女子代表
2012年 日本女子代表
2013年 日本女子代表
2014年 日本女子代表
2015年 日本女子代表
【通算出場記録】※2025年5月11日時点
2021-22(浦和)リーグ 0試合出場 0得点/皇后杯 0試合出場 0得点
2022-23(浦和)リーグ 4試合出場 0得点/カップ 0試合出場 0得点/皇后杯 0試合出場 0得点
2023-24(浦和)リーグ 3試合出場 1得点/カップ 4試合出場 0得点/皇后杯 2試合出場 1得点
2024-25(マイナビ仙台)リーグ 16試合出場 0得点/カップ 4試合出場 0得点/皇后杯 2試合出場 1得点
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