【マイヒストリー】高平美憂選手

マイヒストリー

「子どもの頃からの夢を叶えたからこそ、選手として成長し続ける決意を」 
4 DF 高平 美憂選手

マイナビ仙台レディースの選手に、これまでの歩みを振り返ってもらう「マイヒストリー」。それぞれのサッカー人生に物語があり、かけがえのない記憶があります。第6回は4DF高平美憂選手です。現在、リーグ戦全試合フル出場で、クロス数はリーグで2位という活躍ぶり。左サイドに欠かせない存在となった高平選手に、彼女の歩んできた日々や今の思いを伺いました。

泣き虫な女の子。エリート揃いのJFAアカデミー福島で苦しくてもサッカーを続けた。

――高平選手は静岡県富士市の出身、サッカーを始めたきっかけはどのようなことでしたか

「6歳上の兄の影響です。兄のサッカーの試合について行って、自然とボールを蹴るようになりました。チームに入ってサッカーを始めたのが小学1年生だったと思います。」

――小さい時はどんなお子さんでしたか?

「今も変わらないんですが、泣き虫で、すごく負けず嫌いな女の子でした。ちょっとしたことですぐ泣くんです。男の子にからかわれて泣いていました。でも、今も泣き虫ですね。今年はキャンプでも泣いています(笑)」

――そんなイメージはなかったのですが……。大人になってからはどんなことで涙しますか?

「調子の波がある時やドラマを見ていて泣くこともあります。感動したり、切なくなったりして泣きます。以前より涙もろくなったかもしれないですね。」

――2012年にJFAアカデミー福島へ。100人ほどが受験して、入学できるのは5~6人ほどという狭き門です。どのようなきっかけでJFAアカデミーを受験したのですか?

「幼稚園や小学校の頃の夢がプロサッカー選手だったんです。卒園アルバムの夢に『プロサッカー選手』と書いていました。小学生の頃には、浦和レッズレディースや日テレ・ベレーザなどのクラブチームをあまり知らなかったんです。静岡県でサッカーと言えば、候補となる高校が2つあって、藤枝順心高等学校と常葉橘高等学校、そのどちらかに行く予定ではあったんです。将来的になでしこジャパンに入りたいという思いがあって、JFAアカデミーならば代表との距離も近いかもしれないと思いました。親が試験のことなどを調べてくれました。」

――JFAアカデミーで過ごした6年間はどのような時間でしたか?

「自分にとって、良いことも辛いこともあった6年間でした。中学2年生の時に、サッカーも学校も嫌になってしまった時期があり、休みがちになってしまいました。『やめようかな』ということを、そこまで本気ではなかったですが親に話しました。じっくりと話し合って続けることになったんですが……。」

――そこでやめなかったから続けて来られました。

「選手となって脚の手術をしたことがありましたが(2019年、右足甲内側の軟骨損傷)、その時も悩んで兄に『やめたいんだよね』ということを話しました。兄には『やめたいなら、やめちまえ』と怒られたんです。その時、とても悔しい思いが湧いてきて、続けました。今思えば、本当にサッカーをやめず、続けてきて良かったです。」

プロサッカー選手は子どもの頃からの夢。プロの責任感が芽生えたWEリーグ開幕。

――そこでやめていたら全く違う人生でしたね。この6年間、いろいろなことを乗り越えて、高校卒業のタイミングで、2018年当時の「マイナビベガルタ仙台レディース」に入団しました。

「はい。新しい環境に早く慣れたい、試合に絡んでいきたいという気持ちが強かったです。」

――仙台での在籍はすっかり長い方になりました。2021年にはWEリーグも発足しましたが、こういう形で「プロサッカー選手になる」という展開は想像していましたか?

「マイナビベガルタ時代は、基本的にほとんどの選手がアマチュア契約でしたよね。しかし、何人かプロ契約を結んでいる選手もいました。私もプロ選手になれるならば、なりたいという話もしていました。そんな時に、もしかしたらプロリーグができるかもしれないという可能性のある話を聞きました。『ついに女子のプロリーグができるんだ』という感じでした。」

――夢を一つ叶えたことになりますね。プロになったことで最も変わったのはどういうところでしたか?

「まず率直に嬉しい気持ちがありました。そしてプロ選手になったからこそ、今度は小さい子たちに憧れを持ってもらえるような選手にならなければいけないと思っています。気持ちの上の変化としては、これまでネガティブになりやすかったところを、ポジティブに考えられるようになったこと。そして勝負に対しての気持ちが、プロ選手になってより強くなったと思います。」

――プロになる前とは、心構えなどは変わりましたか?

「はい。プロとしての責任感を感じています。それから以前コーチから言われたことなのですが『プロ選手となると、お金(年俸)が自分の価値だ』と。そういうことを聞いた時に、改めて『プロなんだなぁ』と実感しました。本気でやらなければいけない。プロは契約更新もあれば、契約できないという評価もあったりする。私が更新できても、更新できなかった選手の話も聞いています。これがプロの世界なんだなって思いました。」

試合を「また見に来たい」と思ってもらいたい。歩みを止めず、成長し続ける。

――プロリーグとしてのWEリーグは早くも3シーズン目の後期に突入しています。今戦いながら感じていることはどのようなことですか?

「今シーズンの個人的なテーマは『成長し続ける』ということです。とにかく個人のレベルを上げることを目指して、それを言い続けています。」

――個人のレベルアップがチーム自体を大きく引き上げていきます。高平選手は、リーグでも2位のクロス数。全試合フル試合出場も努力の証です。

「私個人の特長はクロスですが、実際に得点につながっているかと言ったら、全然つながっていないので、自分の精度が低いからゴールにつながっていないということだと思うんです。もっとやらなきゃいけないと思います。それから、いろんな戦術を知っていく中で、自分の新たな一面を知る、学ぶ時間も作れているので、それを吸収しつつ、試合で見に来て下さった方に、『この選手、良いな』『また見に来たいな』と思ってもらえるようなプレーができればいいなと思っています。」

――これからサッカーを始めてみたい子やサッカー選手を志す子どもたちへメッセージをお願いします。

「悩んでいたら、まず一歩踏み出す勇気も必要だと思います。悩んでいる時に、サッカーをやってみたいなと思ったら、一歩踏み出して何事にもチャレンジしてみて欲しい。まずはやってみて、できなかったり、何かが違ったら、また新しいことを見つけてみればいいと思います。チャレンジする気持ちと一歩踏み出す勇気を持っていれば大丈夫だと思います。」

文・写真=村林いづみ
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